「できたこと」に意識的に目を向け、自己肯定感を高める方法
「できていない」に囚われていませんか?
日々の業務や責任が増える中で、「もっとこうすればよかった」「なぜこれができないのだろう」と、「できていないこと」にばかり目がいってしまう経験は少なくないかもしれません。目標に対して達成できなかったこと、部下への対応で後悔したこと、あるいは自分自身の能力の限界を感じることなど、多忙な毎日の中で自己評価が厳しくなりがちです。
このような状態が続くと、次第に自信を失い、自己肯定感が揺らいでしまうことがあります。一生懸命取り組んでいるはずなのに、心が満たされない、あるいは自分には価値がないと感じてしまうこともあるでしょう。
しかし、心の安定と自信を取り戻すためには、「できていないこと」に意識を向け続けるのではなく、「できたこと」に焦点を当てることが非常に有効です。ここでは、その理由と、日々の生活の中で実践できる具体的な方法をご紹介します。
なぜ「できたこと」に目を向けることが重要なのか
私たちの脳は、「危険」や「問題」に注意を向けるようにプログラムされている側面があります。これは、生存のためには必要な機能ですが、現代社会においては「できていないこと」や「失敗」に過剰に反応し、自己肯定感を低下させる要因となることがあります。
一方、「できたこと」に意識的に目を向けることは、以下のような心理的な効果をもたらします。
- 自己効力感の向上: 「自分にはできることがある」という感覚が高まり、新たな挑戦への意欲につながります。
- ポジティブな感情の促進: 達成感や満足感を感じることで、心の状態が前向きになります。
- 自己肯定感の向上: 自分の努力や能力を認め、ありのままの自分を受け入れることにつながります。
- 課題への建設的な取り組み: 「できていないこと」をただの失敗としてではなく、改善のための課題として捉え直す余裕が生まれます。
「できたこと」は、必ずしも大きな成果や成功である必要はありません。ほんの小さな一歩や、当たり前だと思っていることの中にこそ、あなたの価値や努力の証が隠されています。
「できたこと」に意識的に目を向ける実践方法
日々の習慣として「できたこと」に意識を向けるための具体的な方法をいくつかご紹介します。
1. 「今日のポジティブリスト」を作る
寝る前に、その日の出来事を振り返り、「できたこと」を3つから5つ書き出してみましょう。これは日記やメモ帳、スマートフォンのメモアプリなど、何を使っても構いません。
書き出す内容は、例えば以下のような些細なことでも十分です。
- 資料作成を締め切り前に終わらせた
- 部下の相談に寄り、話を聞くことができた
- 忙しい中でも昼休みをきちんと取れた
- 通勤中に好きな音楽を聴いてリフレッシュした
- 家族と短い時間でも会話できた
ポイントは、完璧主義を手放し、どんなに小さなことでも構わないと許可を出すことです。「できたこと」のハードルを下げることが、継続の鍵となります。
2. 小さな成功を意識的に言語化する
何かを成し遂げたとき、それを「たまたまだ」「誰でもできることだ」と軽視せず、意識的に「これは〇〇ができたことだ」と心の中で、あるいは声に出して言語化してみましょう。
例えば、
- 「あの難しい交渉を粘り強く進めることができた」
- 「新しいツールを使うことを覚えることができた」
- 「忙しい中でも、後輩に的確な指示を出すことができた」
のように、具体的な行動や成果を言葉にすることで、達成感がより鮮明になり、自分の貢献を認識しやすくなります。
3. 過去の「できたこと」を振り返る
これまでのキャリアや人生を振り返り、困難を乗り越えた経験や、自分が貢献できた場面を思い出してみましょう。具体的なエピソードを書き出してみるのも良いでしょう。
- 過去のプロジェクトで苦労しながらも成功に導いた経験
- 新しい部署や役割で適応し、成果を出せるようになった過程
- 人間関係で悩んだ末に、建設的な解決策を見つけ出したこと
過去の成功体験は、現在の自分を支える揺るぎない自信の源泉となります。当時の感情や具体的な行動を鮮明に思い出すことで、再び「自分にはできる」という感覚を取り戻すことができます。
4. 他者からのポジティブなフィードバックを受け取る練習をする
人から褒められたり、感謝されたりしたとき、つい謙遜してしまったり、「そんなことはない」と打ち消してしまったりすることはありませんか?これも「できたこと」を認めない一つの形かもしれません。
ポジティブなフィードバックを受けたときは、まずは素直に「ありがとうございます」と受け止める練習をしましょう。それが事実であるかどうかを分析する前に、相手の好意や評価を一旦受け入れてみるのです。他人からの肯定的な評価は、自分が気づいていない「できたこと」を映し出す鏡となることがあります。
5. 「できたこと」の背景にある自分の貢献を認識する
「できたこと」は、偶然の出来事や運だけによるものではありません。そこには必ず、あなたの知識、スキル、努力、あるいは判断や行動が関わっています。
「〇〇ができたのは、私が事前に準備をしていたからだ」「△△がうまくいったのは、私がチームをまとめたからだ」のように、自分のどのような行動や特性がその結果につながったのかを分析してみましょう。これは、自分の強みや価値を具体的に理解する上で非常に役立ちます。
「できていないこと」との健全な向き合い方
「できたこと」に焦点を当てることは、「できていないこと」から目を背けることではありません。改善すべき点や反省すべき点からは学ぶことがたくさんあります。
大切なのは、「できていないこと」を自己否定の材料にするのではなく、「今後の課題」として建設的に捉え直すことです。「今回はこれができなかった。では、次に取り組む際にはどうすればできるようになるだろうか?」と、改善策や具体的な行動計画に意識を切り替えるようにします。
この視点の転換により、「できていないこと」は自己肯定感を下げる原因ではなく、成長のためのステップへと変わります。
まとめ
「できていないこと」に囚われがちな心は、知らず知らずのうちに自己肯定感をすり減らしてしまいます。心の安定と自信を取り戻すためには、意識的に「できたこと」に目を向け、それを認め、積み重ねていく習慣が非常に重要です。
日々の小さな達成、過去の成功体験、他者からのフィードバック、そして自分の貢献を認識すること。これらの実践を通して、あなたの心の中に確かな肯定感を育むことができるでしょう。
今日から一つでも構いません。「できたこと」を意識することから始めてみてください。それが、心の状態をポジティブに変え、仕事や日々の生活における自信を取り戻すための一歩となるはずです。